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2017年2月17日 (金)

村上尚己『日本経済はなぜ最高の時代をむかえるのか?』

副題は「大新聞・テレビが明かさないマネーの真実19」
ダイヤモンド社(2017年)刊。

 出たばかりの日本経済の解説本です。

 著者によれば、経済とりわけ投資の情報として有用な為替予測は、中長期的には各国の金融政策に着目することが重要であるとしています。短期においては、各国の政治動向がショックを与えることがあっても、基本的には為替レートに影響をあたえることはないのです。
 ですから、トランプ政権が成立したことで、「リスク資産となったドルが売られて、安全資産である円が買われる」ことによって、円高ドル安になるという多くの経済メディアが予測していたことは、何ら根拠のあることではなく、冷静に日米双方の中央銀行のマネーの供給量で考えればよかったのです。
 こうした観点から著者は、次のように予測します。まず、アメリカ側は、トランプ大統領が公約として掲げた減税とインフラ投資といったインフレ率を押し上げる経済政策によって、すでに利上げを決定していたFRBが過剰なインフレを防ぐためにも利上げに踏み切る可能性が高くなりました。金利が上昇すると、その国の通貨が買われるので、アメリカの場合はドル高になります。さらに日本側の量的・質的な金融緩和政策の継続と相まって円安ドル高が進むとします。そして、景気回復期においては為替と株価は連動しますので、トランプ政権の経済政策がアメリカ議会に認められて実現し、FRBの利上げが3回以上となれば、日本においては1ドル=130円、日経平均23000円になるとしています

 この予測が当たるかどうかは、日米の政権が安定して自分たちの財政政策を継続・実現できること、中央銀行の金融政策が上記の通りに進むことが前提となります。もしこれらに変化があれば、著者の言うとおり、財政・金融政策から新たな判断をすればよいのです。

 本書は、こうした投資家目線での情報という点で有益ですが、副題にあるように「大新聞・テレビ」の経済メディアがなぜ間違えてしまい、またそれを垂れ流し続けるのか、という問題への指摘が興味深いです。

 著者によれば、著者のように投資家への直接的な利益に直結する情報提供を生業とするアナリストにおいては予測の精度というものが自身のキャリアアップやステータスに関わってきます。しかし、日本の経済メディアでは、予測の的中はそれほど重要ではなく、レポートの数を量産することで、質はそれほど大切ではないこと、また独立した経済評論家の場合、名前が売れることが大切なので、多くのメディアに登場するためにセンセーショナルな話題を提供した方がお呼びがかかりやすい。そのため、彼らの予測は当たりにくい、というよりも当てる気もない、ということになります。
 ですから、金融系のシンクタンクに所属している経済アナリストの予測は、読者に分かりやすく、親会社の意向に沿ったものであって、真剣に分析したものであるとは限らないということになります。
 また、読者は自分が読みたいものを読むという傾向にありますから、正確なものよりも、もっともらしく面白いものを選びます。そうすると予測の当たり外れとは、関係なく面白いものを書いたり喋ったりする人が、多くメディアに登場し、さらにメディアへの露出度がその人の「信用」を増加させることになるので、他のメディアも重宝がって使い、不確かな情報が氾濫することになってしまうのです。
 こうした日本における経済メディアのガラパゴス化は、日本において資産運用をする人口が少ないことに原因があるのかと思います。アベノミクスへの批判に、「株価が上がってだけで、一般庶民には何ら恩恵がない」というものがあります。この批判自体が間違っていますが、それ以前の問題として、「一般庶民」に資産運用をしている人が多ければ、株価が上がることそれ自体で、人々の富を直接増やすことになります。そうすれば、こうした批判自体への支持がなくなるわけですが、多く耳にするということは、一定の支持があるということでしょう。これは、「一般庶民」に株式保有者が少いことの裏返しです。ですから、経済評論でどれだけデタラメのことを言っても、自分のフトコロが痛まないので、正確なものよりも、耳心地の良いもの、面白いものを好んでしまいます。
 多くの「一般庶民」が株式などの投資資産を保有し。自らが経済政策の影響をダイレクトに受けるのだと理解すれば、間違った情報ではなく、確かな情報を選ぶようになって、ジャンクな情報を垂れ流すメディアやアナリストは淘汰されます。そのためにも、金融リテラシーを教育する必要があるのでしょう。
 本書は、そうした「ゴミ」情報を見分けるヒントを多く提供してくれています。

評価 ☆☆☆☆

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