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2017年2月 3日 (金)

野上忠興『安倍晋三 沈黙の仮面』2

前回のつづき

 さて、安倍首相の幼少時代からを描く本書なのですが、そのエピソードの一つ一つは面白いものの、著者の現在の安倍首相に対する評価には少々疑問に思うところが多く、その点をもう少し述べたいと思います。

 例えば、安倍首相の保守主義について次のように述べています。
「重層的な歴史を重んじようとする保守思想とは、排除の論理ではなく、もっと深く広く文化や思想の違いを包含できるものでなければならないようにも思うが、安倍にとっては革新、リベラルは常に敵でしかない。これではずいぶん底の浅い保守しそうに見えてしまう。」(151頁)

 たしかに近代日本の保守主義の思想家として知られる陸羯南の「国民主義」というものは、自由主義も平民主義も共和主義も貴族主義も個人主義も国家主義も含まれるという特徴を主張していました(『近時政論考』)。しかし、この羯南の思想は、一方で様々な思想を包含するがゆえに、国民の中にある多様な価値観や利益の間の対立を見えなくしてしまう機能も果たしてしまう可能性もありました。つまり、本来は相容れず対立し、どちらかを選択しなければならない場合に、「まぁ、同じ国民だし、仲良くしようよ」という言葉によって、有耶無耶にしてしまうというようなものです。

 そもそも保守主義や保守思想は、単に歴史や伝統を大切にするという考え方や態度ではなく、明確な敵が現れた時の反応として、守るべき価値を改めて思想化するというものです。それならば、その敵に対して強い反発や批判は当然のように見られます。
 近代保守主義の元祖とされるエドマンド・バークの『フランス革命についての省察』を開いてみれば、彼が敵視する革命運動家への辛辣な批判や軽蔑に溢れています。現状維持や穏健という単なる保守的態度ではなく、「思想」であり「主義」として理論化を試みているのだから、その正当性を主張するためにも敵に対して攻撃的であるのは当然です
 安倍首相の保守思想は、「「進歩派」「革新」と呼ばれた人達のうさん臭さに反発した」ところから魅かれていったということですから、「進歩派」「革新」への反発の上で思想化したもののようです。それならば、相手に対して攻撃的であるのは確かでしょう。しかし、安倍首相が、その権力を使って、リベラルや左派の政治運動を排除したという話は聞いたことがありません
 反安倍のテレビコメンテーターが次々と降板していくのも、官邸が権力を使ったというよりも、視聴者から飽きられたことが原因でしょう。何だかんだ言っても国民が次の首相を選ぶ総選挙で勝利させて選出された二人目の首相であるし、国政選挙で4回も勝たせている政権です。さらに支持率が、常に40%ほどある政権なのですから、まるで評価せずに頭ごなしに批判ばかりであると、有権者である視聴者がバカにされたように感じるだけです。コメンテーターもその点を理解して、バランスの取れた評価と批判をしなければ、視聴者にソッポを向かれるのも当然でしょう。
 また、著者は、父・安倍晋太郎の「指導者たるものは先頭に立つ必要はなくバランスが大事だ」という趣旨の発言を引いて、「私が~」が多い安倍首相を批判しています。
 しかし、これこそが日本政治の無責任体制の最たるもので、指導者がバランスを取って誰からも批判されないようあらゆる立場からの意見を聞いていったら、その政策が失敗した場合、誰が責任を取るのか。指導者は各方面に配慮してと逃げるし、立案者は提案しただけ、賛同者は大勢に従っただけと責任の所在がはっきりしません。
 その点で、安倍首相は責任意識が明確です。すべて安倍首相の考えとイデオロギーに基いて決断していると述べているのだから、うまく行っていれば、それは首相の実績であるし、失敗すれば、それは直接安倍首相へと責任が及びます。国民主権というのは、国民の意向によって政権の選択を可能にすることであると思います。その点で、何を考えているか明確な安倍首相は、国民の選択基準を与えてくれている分、きわめて民主主義的な指導者であると思います
 私の理想とすれば、安倍氏を首相へと返り咲かせた有権者が、今度は自分の手で選挙によって退陣させることが日本の民主主義の発展のためには望まれるところであると思います。第二次大戦の勝利の英雄であるチャーチルを選挙で退陣させたイギリス国民のように。ちなみに私は、基本的にはアベノミクスを推進する安倍政権に対して支持をしていますが、消費税増税を「私の決断」と述べて断行した安倍首相を支持する訳にはいきませんから、それ以後の国政選挙において選挙区か比例のどちらかの一票は、消費税に一貫して反対している共産党に投じております。消費税増税の凍結か減税を公約にしない限り、私の投票行動は変わらないでしょう。

 あともう少し述べておきたいところがあるので、続きは次回です。

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