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2017年3月28日 (火)

青空文庫を読む(5)

番号は前回のつづきになります。

32.津田左右吉「日本歴史の研究に於ける科学的態度」

 古代史は、文献資料に関する限り確かめようがないので、古代の人がそう思っていたという思想史・精神史研究の材料であって、歴史事実として利用する必要はない、と主張した作品。結局、何らかの物証が出るまでは、そうした態度が「科学」的かもしれません。

33.狩野亨吉「歴史の概念」

 正直、分かったような分からないような。

34.喜田貞吉「旃陀羅考」

 副題は「日蓮上人はエタの子なりという事」。本人がそう書いているし、そういう風に書いている書物も江戸時代ぐらいからで始めているが、実際はどうか、というもの。「漁師の子」なので、殺生に関わっている職業の子と言うことで、仏教的基準から本人がそういう風に述べたものだろう、とのことです。

35.三木清「政治の論理と人間の論理」

 三木清の時代から、ソ連の「非人間」的政治状況について言及されていたんですな。そう考えると、日本の共産党に同情的であったからといって、ソ連のスパイというような雑な歴史観が時折顔をだすのは如何なものか。ソ連とは別の要因があったことも考えるべきでしょう。もちろん、現在においても。

36.木下尚江「幸徳秋水と僕」

 管野スガとの関係について問いただされると、「然し君。僕の死に水を取つて呉れるものは、お千代だよ」と自分の妻の名前を上げて恬然とする秋水に対して、木下もその言葉に「僕は胸がカラリと晴れた」とかいっているのだから、いい気なもんである。


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2017年3月21日 (火)

青空文庫を読む(4)

番号は前回のつづきになります。

27.有島武郎「小さき者へ」

 母親と死別した子どもたちへの書簡のような形式で書かれた作品。モデルは自分自身なのでしょうけど、これだけ母親を失った子どもたちへの愛を語りながらも、数年後には夫ある婦人と恋愛事件を起こした末に心中してしまって、子どもたちに両親ともに失わせるのだから、やはり作品と作者は分けて読まないと感動は薄れますな。

28.三木清「哲学はどう学んでゆくか」

 一冊の本と格闘することが哲学理解の第一の道という考えなので、乱読派の私としては耳が痛いところです。

29.島木健作「赤蛙」

 ふと目にしたものに異様に心動かされることってありますよね。私は、以前、京都の天龍寺の庭園のベンチでみかんを食べている母子を見て、なぜか言いようにない感動を覚えたことを思い出します。

30.喜田貞吉「「日本民族」とは何ぞや」

 さまざまな民族が同化融合して「日本民族」が作られたという考え方なのですが、古代史における謀略によって他部族たちを従えていく物語を、「謀計を以てその巨魁を誅戮し、以て多数の民衆を安んぜしめ給うたのであった」との理解が新鮮でした。『日本書紀』などがあけすけにそういった話を書いているのを如何なものかと思っていましたが、そう考えると私も理念上の武士道的な発想にとらわれていたのかもしれません。

31.宮沢賢治「風の又三郎」

 昔読んだように思っていましたが、さっぱり覚えていませんでした。しかし、これって一体何の話だったのでしょうか。そして、多くの人は何に感動しているのでしょうか。



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2017年2月17日 (金)

村上尚己『日本経済はなぜ最高の時代をむかえるのか?』

副題は「大新聞・テレビが明かさないマネーの真実19」
ダイヤモンド社(2017年)刊。

 出たばかりの日本経済の解説本です。

 著者によれば、経済とりわけ投資の情報として有用な為替予測は、中長期的には各国の金融政策に着目することが重要であるとしています。短期においては、各国の政治動向がショックを与えることがあっても、基本的には為替レートに影響をあたえることはないのです。
 ですから、トランプ政権が成立したことで、「リスク資産となったドルが売られて、安全資産である円が買われる」ことによって、円高ドル安になるという多くの経済メディアが予測していたことは、何ら根拠のあることではなく、冷静に日米双方の中央銀行のマネーの供給量で考えればよかったのです。
 こうした観点から著者は、次のように予測します。まず、アメリカ側は、トランプ大統領が公約として掲げた減税とインフラ投資といったインフレ率を押し上げる経済政策によって、すでに利上げを決定していたFRBが過剰なインフレを防ぐためにも利上げに踏み切る可能性が高くなりました。金利が上昇すると、その国の通貨が買われるので、アメリカの場合はドル高になります。さらに日本側の量的・質的な金融緩和政策の継続と相まって円安ドル高が進むとします。そして、景気回復期においては為替と株価は連動しますので、トランプ政権の経済政策がアメリカ議会に認められて実現し、FRBの利上げが3回以上となれば、日本においては1ドル=130円、日経平均23000円になるとしています

 この予測が当たるかどうかは、日米の政権が安定して自分たちの財政政策を継続・実現できること、中央銀行の金融政策が上記の通りに進むことが前提となります。もしこれらに変化があれば、著者の言うとおり、財政・金融政策から新たな判断をすればよいのです。

 本書は、こうした投資家目線での情報という点で有益ですが、副題にあるように「大新聞・テレビ」の経済メディアがなぜ間違えてしまい、またそれを垂れ流し続けるのか、という問題への指摘が興味深いです。

 著者によれば、著者のように投資家への直接的な利益に直結する情報提供を生業とするアナリストにおいては予測の精度というものが自身のキャリアアップやステータスに関わってきます。しかし、日本の経済メディアでは、予測の的中はそれほど重要ではなく、レポートの数を量産することで、質はそれほど大切ではないこと、また独立した経済評論家の場合、名前が売れることが大切なので、多くのメディアに登場するためにセンセーショナルな話題を提供した方がお呼びがかかりやすい。そのため、彼らの予測は当たりにくい、というよりも当てる気もない、ということになります。
 ですから、金融系のシンクタンクに所属している経済アナリストの予測は、読者に分かりやすく、親会社の意向に沿ったものであって、真剣に分析したものであるとは限らないということになります。
 また、読者は自分が読みたいものを読むという傾向にありますから、正確なものよりも、もっともらしく面白いものを選びます。そうすると予測の当たり外れとは、関係なく面白いものを書いたり喋ったりする人が、多くメディアに登場し、さらにメディアへの露出度がその人の「信用」を増加させることになるので、他のメディアも重宝がって使い、不確かな情報が氾濫することになってしまうのです。
 こうした日本における経済メディアのガラパゴス化は、日本において資産運用をする人口が少ないことに原因があるのかと思います。アベノミクスへの批判に、「株価が上がってだけで、一般庶民には何ら恩恵がない」というものがあります。この批判自体が間違っていますが、それ以前の問題として、「一般庶民」に資産運用をしている人が多ければ、株価が上がることそれ自体で、人々の富を直接増やすことになります。そうすれば、こうした批判自体への支持がなくなるわけですが、多く耳にするということは、一定の支持があるということでしょう。これは、「一般庶民」に株式保有者が少いことの裏返しです。ですから、経済評論でどれだけデタラメのことを言っても、自分のフトコロが痛まないので、正確なものよりも、耳心地の良いもの、面白いものを好んでしまいます。
 多くの「一般庶民」が株式などの投資資産を保有し。自らが経済政策の影響をダイレクトに受けるのだと理解すれば、間違った情報ではなく、確かな情報を選ぶようになって、ジャンクな情報を垂れ流すメディアやアナリストは淘汰されます。そのためにも、金融リテラシーを教育する必要があるのでしょう。
 本書は、そうした「ゴミ」情報を見分けるヒントを多く提供してくれています。

評価 ☆☆☆☆

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